コラム

ブエルタ・ア・エスパーニャ2019の結果まとめ

自転車ロードレースシーズン最後のグランツール「ブエルタ・ア・エスパーニャ」。74回目となる2019年大会は波乱の展開、予想外の新人、悲願の初制覇と話題に満ちた3週間でした。
2019年8月24日から9月15日まで行われた熱きレースの模様を振り返っていきます。

総合優勝(マイヨ・ロホ)を勝ち取ったのはプリモシュ・ログリッチェ

21ステージ3272kmという長い道のりを経て、総合優勝の証「マイヨ・ロホ」を勝ち取ったのは、スキージャンプ選手という異色の経歴を持つプリモシュ・ログリッチェ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)でした。

序盤戦はアスタナ・プロチームのTTT優勝に始まり、ナイロ・キンタナ(モヴィスターチーム)が早々にステージ優勝を勝ち取ります。
その後も、若手レーサーの登竜門でもある「ツール・ド・ラヴニール2018」で総合優勝を果たした20歳の新星ダディ・ポガチャル(UAEエミレーツ)や39歳のアレハンドロ・バルベルデ(モヴィスターチーム)が勝利を収めるなど総合勢の活躍が目立ちました。

9ステージまでは、1~4位のキンタナ、ログリッチェ、ロペス、バルベルデの4名がわずか20秒差の間に収まるという熾烈な争いに1分42秒差でポガチャルが食らいつくという展開。マイヨ・ロホ、新人賞争い(ポガチャルとロペス)に注目が集まります。

潮目が変わったのは第10ステージの個人タイムトライアル。
ここでログリッチェはステージ優勝を果たしライバル達に1分30秒以上の差を付けマイヨ・ロホを獲得。混沌としていた総合優勝争いの中で、一人抜け出した形になりました。

その後はログリッチェが安定した走りを披露。モヴィスターのダブルエース体制は機能せず、ロペスも不調、唯一ポガチャルだけが調子をあげていきステージ3勝を達成。

終わってみれば、ログリッチェが自身初のブエルタ・ア・エスパーニャ&グランツール制覇を達成。今季のジロ・デ・イタリアでは総合3位という悔しさを晴らす結果となりました。
そした、今年一番のサプライズは20歳のポガチャル。総合3位&表彰台&新人賞&ステージ3勝という華々しい結果を残し、今後の総合ライダーの勢力図に風穴を開ける予感がします。

悔しいのはモヴィスターチーム。今季のツール・ド・フランスでは、総合トップ10に3名のライダーが名を連ねるも鳴かず飛ばずの結果に泣き、今回のブエルタではバルベルデの総合2位&表彰台と結果は残したものの、また総合優勝は果たせずTOP10にはバルベルデ、キンタナ、ソレルの3名がランクイン。チームの選手層の厚さとチームワークのギャップが目立った大会となりました。
ただ39歳のバルベルデがグランツールで表彰台に上がるという快挙を達成。

ステージ優勝&マイヨ・ロホ

ステージ ステージ優勝 チーム名 マイヨ・ロホ チーム名
1
(TTT)
アスタナ・プロチーム ミゲル・アンヘル・ロペス アスタナ・プロチーム
2 ナイロ・キンタナ モヴィスター チーム ニコラス・ロッシュ チーム・サンウェブ
3 サム・ベネット ボーラ・ハンスグローエ
4 ファビオ・ヤコブセン ドゥクーニンク・クイックステップ
5 アンヘル・アドラソ ブルゴスBH ミゲル・アンヘル・ロペス アスタナ・プロチーム
6 ヘスス・エラダ コフィディス ディラン・トゥーンス バーレーン・メリダ
7 アレハンドロ・バルベルデ モヴィスター チーム ミゲル・アンヘル・ロペス アスタナ・プロチーム
8 ニキアス・アルント チーム・サンウェブ ニコラ・エデ コフィディス
9 ダディ・ポガチャル UAEチームエミレーツ ナイロ・キンタナ モヴィスターチーム
10 プリモシュ・ログリッチェ チーム ユンボ・ヴィスマ プリモシュ・ログリッチェ チーム ユンボ・ヴィスマ
11 ミケル・イトゥリア エウスアディバスクカントリー
12 フィリップ・ジルベール ドゥクーニンク・クイックステップ
13 ダディ・ポガチャル UAEチームエミレーツ
14 サム・ベネット ボーラ・ハンスグローエ
15 セップ・クス チーム ユンボ・ヴィスマ
16 ヤコブ・フルサング
17 フィリップ・ジルベール ドゥクーニンク・クイックステップ
18 イギータ・ガルシア アスタナ・プロチーム
19 レミ・カヴァニャ ドゥクーニンク・クイックステップ
20 ダディ・ポガチャル UAEチームエミレーツ
21 ファビオ・ヤコブセン ドゥクーニンク・クイックステップ

総合順位

総合順位 選手 チーム名 タイム差
1 プリモシュ・ログリッチェ チーム ユンボ・ヴィスマ 83h 07′ 14”
2 アレハンドロ・バルベルデ モヴィスター チーム + 00h 02′ 33”
3 タディ・ポガチャル UAEチームエミレーツ + 00h 02′ 55′
4 ナイロ・キンタナ モヴィスター チーム + 00h 03′ 46”
5 ミゲールアンヘル・ロペス アスタナ プロチーム + 00h 04′ 48′
6 ラファル・マイカ ボーラ・ハンスグローエ + 00h 07′ 33”
7 ウィルコ・ケルデルマン チームサンウェブ + 00h 10′ 04”
8 カールフレドリック・ハーゲン ロット・スーダル + 00h 12′ 54”
9 マルク・ソレル モヴィスター チーム + 00h 22′ 27”
10 ミケル・ニエベ ミッチェルトン・スコット + 00h 22′ 34”

4賞ジャージ

マイヨ・ロホ ポイント賞 山岳賞 新人賞
プリモシュ・ログリッチェ プリモシュ・ログリッチェ ジョフレ・ブシャール ダディ・ポガチャル

グランツールの勢力図が一新!

今季のグランツールで象徴的だったのは、3つの大会で総合優勝を果たしたのがいずれも初優勝の選手だったということです。 ジロではエクアドル人のカラパス(モヴィスターチーム)、ツールではコロンビア人のベルナル(チームイネオス)、そして、ブエルタではスロベニア人のログリッチェでした。

これまではチームスカイ一強体制でクリス・フルームが王者として君臨しており、2010年代はまさにフルームとスカイの時代でした。
今季もチームイネオスの強さは圧倒的でしたが、それに追随するチームも現れています。

特に、チーム・ユンボ・ヴィズマの躍進が目立っています。ジロではログリッチェの総合3位、ツールでもクライスヴァイクが総合3位、ブエルタでのログリッチェ総合優勝と今季はイネオスにも劣らない活躍を見せています。

オランダを本拠地にするチームでもあり、来シーズンは自国出身のトム・デュムランを獲得するという噂もあります。
総合ライダー争いの勢力図が変わりつつある中で、自転車ロードレース界も新しい時代に突入することが予想されます。

さらには、ログリッチェとポガチャルは同じスロベニア出身。伝統国のフランス、イタリア、スペインに加え、イギリス、コロンビア、アフリカ大陸、そして東欧からも優秀な選手が輩出されています。

まとめ

1年で最後のグランツール「ブエルタ・ア・エスパーニャ」が終わり、本格的にシーズンの終盤が見えてくる季節になりました。
今後は世界選手権やモニュメントの「イル・ロンバルディア」、そして、日本でもジャパンカップが開催されるなど盛り上がりはまだまだ続きそうです。

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