ヨーロッパで採択された「サイクリングに関する欧州宣言」について
欧州委員会では2023年10月に「サイクリングに関する欧州宣言」が採択されました。
持続可能な交通手段としてのサイクリングをより利用しやすくするための提言でもあり、健康的かつ経済的に重要な交通・娯楽の手段として位置付けられています。
今回は「サイクリングに関する欧州宣言」の内容を紹介します。
サイクリングに関する欧州宣言の主な内容

「サイクリングに関する欧州宣言」は主に8つの章に分けて、サイクリングの普及・推進に向けた具体的な内容が示されています。
では、1つずつ詳しくみていきましょう。
自転車政策の策定と強化
自転車に関連する政策を策定・強化することで、より自転車を積極的に利用するための環境づくりが主張されています。
例えば、広域通勤圏などの都市における自転車対策(交通レーンや駐輪場など)や、自転車通勤に対する奨励金などが挙げられます。
誰もが利用できる包括的で安価なモビリティの推進
自転車に気軽に乗れる人だけでなく、障害を持つ方や身体の不自由な方など、年齢や性別に関係なく、誰もが安価かつ気軽に移動できる手段を確保することが求められています。
この中の手段の1つとして、安価に手に入る自転車が求められていますし、自転車を購入できるだけの所得水準の向上などが挙げられます。
自転車インフラの整備
自転車インフラの質や量の向上も、自転車利用の促進には不可欠です。
例えば、車道で安全に自転車が走れるためのスペースを確保したレーンの充実や車との分離も重要ですし、今後増加してくる電動自転車の充電スポット導入も求められています。
サイクリングへの投資の拡大
サイクリングを推進するための理想的な環境を整備するためには、積極的な投資を拡大させなければなりません。
この宣言では、技術的なサポートに加えて、資金や融資の提供による投資の拡大が求められています。
交通安全とセキュリティの向上
誰もが安心して自転車に乗れるようにするには、交通安全とセキュリティの向上は必須です。
交通弱者を含めて、死亡事故ゼロの実現を目指しながら、あらゆる交通手段が共存するための交通ルール策定が求められています。
その他にも、電動自転車の安全要件の充実や駐輪場でのセキュリティ向上、子供や若者への自転車教育などの意識向上にも触れています。
質の高いグリーン・ジョブと自転車産業の発展をサポート
サイクリングの普及を促進させるのに併せて、質の高い仕事が増加しなければならず、経済と自転車産業の発展を両立させなければなりません。
例えば、幅広い自転車の生産増加を実現するための競争環境の整備や、自転車ツーリズムによる雇用の創出が触れられています。
その他にも、自転車シェアリングや自転車物流など、自転車に関連する産業の支援を積極的に行っていくことが求められています。
マルチモビリティとサイクルツーリズムの支援
都市部や農村部の両方において、鉄道やバスなどの交通手段の中で自転車は複合的な接続性と、観光環境の改善において重要な役割を果たします。
そのためには、自転車と他の交通機関との複合的な利用を促進して、相乗効果を生み出すことが求められます。
例えば、バスや電車で気軽に自転車を輸送できる環境が求められています。
その他にも、移動におけるファーストマイルとラストマイルのアクセスを改善するために、自転車シェアリングの拡大が必要です。
サイクリングに関するデータ収集の改善
自転車に関するデータをより効果的に収集する方法が求められています。
さまざまな取り組みの効果を測定したり、進捗状況のモニタリングを行ったりするためにも、標準的なデータ収集方法の確率が必要です。
まとめ
ヨーロッパで採択された「サイクリングに関する欧州宣言」を紹介しました。
自転車を持続可能な交通手段として利用を促進するために必要な条件が具体的に示されていましたね。
日本でもこのようなコンセプトが示されれば、自転車の環境整備もスムーズに進められるかもしれません。
「サイクリングに関する欧州宣言」の原文は以下のリンクから確認できるので、興味のある方はぜひご覧ください。